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2018年9月 5日 (水)

偲ぶ会

昭和年代皮膚病治療は医療の隙間で薬局は勉強すれば皮膚病で評判を取れた。平成に入ると皮膚科医が街にあふれるようになった。

薬局の講習会に皮膚科の名医が講演してくださり、レベルに合わせ豊富なスライドを見せてくれながらやさしく解説してくれた。薬剤師でも懸命に勉強し豊富な治験から講師の皮膚科のドクターも認める程知識と経験を積んだ人もいた。

我々を指導してくれた薬剤師(以後先生と呼ぶ)の学んでいた「皮膚科診療の実際」という学術書を見た時に本はこんなにすり減るものかと思った。厚紙の固い表紙にクロス張りをして有るのだがクロスは薄くなりささくれ立ち良く指の当たる個所は厚紙が穿れていた。この熱中具合だ、人知れず努力をしていなければ知識知恵は生まれない。皮膚科のドクターと数年寝食を共にし基礎を学んだと聞いたことも有る。

私たちが所属した組織は当時、少数の明治生まれと大半の大正生まれが指導していたが私たちの心酔した先生は規律の基本を守ればうるさいことは言わなかった。執行部の先輩は学力よりは規律遵守を強いしっくりいかなかった。

その先生の学術に対する努力の過程で頭脳は柔軟でなければならい、万が一失敗してもリカバリーできる多様性も持たなければならない。基本は初見の確かさを一番に磨かなければならないという厳しい勉学と実践の積み重ねからくる人格が権威主義の執行部の感覚より許容範囲は広く心を開いて学べた。

程度の低い質問にも丁寧に教えてくれ偶には礼儀を失した行為にも腹を立てずに応対してくれ知らず知らずに尊敬していた。

勉強は五時迄で五時を過ぎるとドリンクタイムで滅茶苦茶飲んだ。金が足りなくなったこともしばしばあった。全力で学び全力で遊んだ時期だった。生徒の親たちは五時以降の事しか目に着かず苦々しく見ていた。

生徒たちも年齢を重ねると皮膚病薬の販売にも他の病気に対する考察でもしっかりした理論を持ち楽しく接客した。先生からは勉強はエンドレスの繰り返しだと云われながら10年もたつとそれぞれの興味に歩き出した。我々の他にも生徒は先生の学問を慕って二期生三期生と区切りを付けて増えてきた。

それに反し一期生は心ならずもそれぞれ歩みだした。多店化する者、地方議員になる者、在宅医療に打ち込む者調剤を先取りする者漢方に打ち込む者とバラバラになったが理由を作っては先生の下に集まった。私は最後まで組織の委員として先生をサポートしていた。組織の皮膚病部会を存続させるのに責任者にならなければならい状況になったが私の興味は漢方に移り古代の東洋思想に弄ばれ全力で打ち込まなければならなかった。60歳を過ぎ二股は掛けられない体力になって責任者として部会をリードすることは出来ないと断ってしまった。これが何時までも申し訳なさとして残る。

体調不良を理由に先生に断ったが先生は寂しそうだったが許してくれた。それまでも無理強いは決してなかっただけに先生の寛容さに手を合わせた。三期生が熱心に学び先生を盛り上げてくれた。ありがとう。

私は店を止め皆とは薬局のチェーンの繋がりだったので情報は少なくなり先生が90歳を過ぎる頃から音信が無くなった。連絡を取っていた仲間にも風聞も無かったようだ。

八月の下旬に突如先生が今年一月に亡くなったと連絡が入った。皮膚病の勉強は全うしなかったが夫々の方向で活躍している面々は先生の家族と連絡を取りながら礼を失しないように偲ぶ会を9月2日に開いた。皮膚病の勉強は頓挫したが教えの一つである5時からの行動計画は素早い。一部分でも教えを継続していることは良いことだ。

先生の先祖は幕府の御殿医だったと云うだけあってダンディーな品のある遺影が組織から届いて皆の脳裏に先生の姿が夫々に浮かんだ。

八方破れの様で規則は守った先生に似つかわしいように般若心経の読経をプログラムに入れるから読めと年長の議員さんから至上命令(組織の金言で絶対服従の意)があり、折に触れ仏壇で上げているお経を精一杯唱えさせてもらった。カウベルの木魚も雰囲気を高めてくれた。

先生の徳を偲び皆の人生と店に恩恵を授けてくれた御恩に話は尽きなかった。

 

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コメント

先生が天上?で喜ばれたと思います。
素晴らしい組織ですね。

佐平次さん 泰緬鉄道敷設の時通訳として従軍していて英語、タイ語は堪能でした。青春時代を過ごしたタイには良く行っていました。何をやっても適わないところが素晴らしかったし寛容さがまねの出来なかったところです。

そういえば、昭和3-40年代に根本にあった内山医院は皮膚科、内科だったなあ・・・

ぺんぺんさん 内山医院の次男は中学の同級生です。ファイターで柔道は強かったようです。根本の踏切わきで八百屋さんをやっていた子、根本大通りのやのなか電気さんとは仲良かったです。

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